FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

暗闇との対話:ダイアログ・イン・ザ・ダーク体験記

ドイツ生まれのワークショップに参加って、なんか文化人ぽくね!?
…などと鼻息荒くして、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」に参加してまいりました。

太古のPCゲームで「アローン・イン・ザ・ダーク」というクトゥルフ神話をモチーフとしたホラーゲームがございますが、まったく無関係です。
暗闇といってもクトゥルフの落とし子や、ヨグ・ソトース様はいらっしゃいません。

さて、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下、DID)」は、暗闇の少人数ワークショップ。
ここでは健常者が「見えない」というハンディキャップを持ち、全盲のアテンドが参加者を案内します。
つまり当たり前が逆転した世界。こんな面白いイベントに参加しない手はありますか!?

てなわけで、会場は外苑前でした。
完全予約制で、1ユニット8人というのが決まりです。

受付で身分証を提示して、あとはワクテカしながらスタートを待ちます。
同じチームの人は、カップルが3組、女性同士の組み合わせが1組で計8人。
もちろん、全員初対面です。

出発時間になると、受付の人から簡単な説明を受け、白杖をひとり1本ずつ受け取ります。
そのあと、光を抑えた部屋に移動して、白杖の使い方のレクチャーを受けます。
また、まわりを探るときには手のひらではなく手の甲を使うことや(突き指の危険や思わぬモノを触ってしまわないように)、いちいち自分の行動を発言してチームのみんなに知らせることなど(見えないからね)を教わって、「ふむふむ」としたり顔で頷いてみたりする。

その後、チームのアテンドをする方が登場し、さらに明かりを落としてからみんなで簡単に自己紹介。
アテンドは「隊長」というあだ名の気さくな男性で、よく通るイイ声の持ち主でした。
他8人も順番に自己紹介をし、さらに真っ暗な部屋へそろそろと移動します。


が!


ここいらへんで、すでに目を開けていても何一つ見えない…。
私は目がかなり悪いので、暗いところでモノが判別できないというのは慣れた感覚ではあるのですが、光源がなにひとつない闇というのはそうそう体験するようなもんでもありません。
暗闇に妙な圧力を感じてなかなか足が前に進まない。近くに障害物があるのかどうかすらわかんない。

頼りになるのは杖の先の感覚と、かざした手にときたま触れる障害物(モノ?人?)、「こっちですよー」という隊長の声だけ。
まだみんなあまりしゃべらないので、お互いの位置が把握できず、ひしひしと団子状態になって進んでゆきます。
うーん、狭いのか広いのかわからないなー。
少し進んだところで、隊長の声が聴こえました。

「まわりに草が生えてるんですよ。触ってみてください」

そういえばさっきから濃厚な草の香りがすると思ったら、まわりにホンモノが置いてあったらしい。
手の甲で触ってみると、壁沿いにつるりとした葉の感触。おや?竹も植えてあるのかな?
頬に当たる涼しい風。聴こえてくる虫の声。足元は木屑と藁かな?

いろいろ触って感触を楽しんでいると、隊長が「ちょっと横失礼しますねー」と至近距離をすり抜けていって(!)、今度は離れたところで声。
隊長すげえ。なんでぶつからないで歩けるんだ!!

「ここに川がありますよー。注意深くしゃがんで、水に触れてみてください」
「あっ、本当だ。水がある~!」

低い位置から他の参加者の声がします。
声を頼りにじわじわと頼りに進んでいくと、杖の先にコツンと固いものが当たる感触。
しゃがんで触ってみるとひんやりした石。石の向こうに指を突っ込むと、本当に水がありました。

「おお!水だ!」
「どこですか~?」
「ここですー!」
「このへんでしゃがんでみて~」

参加者で教えあっているうちに緊張もほぐれてきました。
初対面だというのに、暗闇だとお互いの距離感が縮まって、気楽に話せるんですよね。
相手の顔も見えないので、変な先入観をもてないというか、なんというか、心理的ハードルがえらく低い。

「では次、丸太の橋を渡ってここまできてください!」

どうやら川に橋がかけてあるようだ。
近くの人が「ここに丸太がある!」というので、足と杖で探りながら歩いていくと、3本の丸太を床に並べてあるのがわかりました。
ここもひしひしと団子状態になって進みます。
ふうむ、見えなくてもなんとかなるもんだなあ…。

それから、参加者で輪になって(輪になるのが大変だった)簡単なゲームをやったり、ぐらぐらする吊り橋を渡らされたりと、いろいろな趣向で楽しませてくれます。
民家を模したセットなどもあって中が探検できるんですが、この頃になると暗闇に感覚が慣れて、視覚以外の情報で広さや中の様子を把握できるようになります。
たとえば、自分の近くの障害物が無機物なのか人なのかというのが、声の反響と体温でわかる。スゲエ。

最後は、隊長行きつけ(という設定の!)のバーへ移動。
バーに入った途端、リンゴジュースとビールのニホイを嗅ぎ取ってしまいました。
もちろん私は大人ですので迷わずビールを注文。うぇっへっへ。

空のグラスが配られ、そこへマスターと隊長が手分けしてビールを注いでくれます。
ちょー!この暗闇でどうしてこぼさないの!!
だがふたりとももともと全盲なので、特に問題ないのだとか。

そして、暗闇の中で飲むビールですが、とにかく香りがスゴイ。
視覚が遮断されているせいか、味覚と嗅覚がより鋭敏になっている感じです。
クソ不味いものを食べたらクソ不味さも増幅されるのだろうか。
などと余計なことまで気になってしまいました。

バーで一息ついてから、ようやく光のある世界へ。
目を慣らすために暗い部屋でしばらく休憩しつつ、各々感想を語り合いました。

ここで再びメンバーの顔が判別できるようになったのですが、声と名前は記憶にあるのに顔と一致しない!という感想の人がいました。
むしろ私は顔を覚えない人なのでであんまり違和感なかったのですが、顔で記憶する人は不思議な感覚だったようです。
また、隊長がそもそも全盲であるということをさっぱり失念していたのですが、真っ黒なメガネをしているのを見て、「そういえば…」と思い出しました。
そうか、今までは隊長にとって当たり前の世界にいたんだなー、と。
「隊長すごかったです!」といったときの照れたような笑いが印象的でした。

まさに、ハンディキャップがあるからこその能力を生かせる職場。
ドイツみたいに、日本でもDIDが常設になればいいのになあ。

ほんの1時間30分という短いワークショップでしたが、暗闇というだけでガラリと変わる世界や、普段意識していない五感を堪能できました。
暗闇の中では、人種も性別もハンディキャップも越えて、誰もが対等な関係になるというのもコンセプトのひとつだそうですが、参加してみて納得。
見知らぬ人と助け合って進むことで、誰もが根っこに持っている優しさを感じます。自分も優しくなれます。

いやー、これは素晴らしいイベントだなー!
大人だけじゃなく、子供たちにもぜひ体験してみて欲しい!

なお、今回のDIDは6月まで開催が決まっているようです。
興味のある方は公式サイトをどうぞ。


関連記事
スポンサーサイト

- 0 Comments

Post a comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。